北海道行き③ 牛の話
翌日は、昨晩の深酒のせいか早くに目が覚めた。
朝食まで暇なので温泉に入った。
7時に予約しておいた朝食を食べたあと、ホテルを出て海岸にできた『しべつ「海の公園」オートキャンプ場』を見に行った。
シーズンオフなのと早朝だったのか利用客もいないし案内所にも人がいなかった。
観光案内所もかねている。
ここの売りは、釣り突堤100m。
写真をとったり掲示されてるのを読んだりしてから、知人Kさん宅へお邪魔した。
Kさんは以前農協に勤めておられたのだが、「明日から農協祭で農協のスーパーの安売りがあるんだー、けど一日早かっただな」と言いながら新聞の折り込み広告を差し出された。
兄がその農協のスーパーでいつもいろいろ買うからそんな話になったのだが、その広告を見ていたら、スタンチョンという写真を見てもそれが何なのか全然分からない物が安売りになっていた。
それでKさんに尋ねたら、そうだよね~と笑いながら、スタンチョンというのは牛の首を挟んで首の上下はある程度できるように繋いでおく器具ということを教えてもらった。
所変われば品変わるでした。
そんなことから牛の話になったのだが、Kさんが言うには「今は牛のワクチンを打つのや牛の手術を手伝っている」ということでその話を聞かせていただいた。
標津町の内陸部は乳牛の飼育が盛んなのだが、その乳牛の手術の話だった。
まず牛をどのように手術台に乗せるのかという話から始まった。
手術台は最初壁のように立っていてそれに牛を括り、それから手術台が倒れるらしい。
足も括って吊り上げるとか。
それは分かったが、それにしても牛にどんな手術をするのかとものすごい興味が湧いた。
結論を言うと、牛の胃は四つあるが、その第四胃が詰まるという問題が多いということだった。
何故そうなるのか説明してもらった。
牛は反芻動物で本来なら草を食べ反芻するようにできているが、近頃は柔らかい濃厚飼料を与えるので反芻できずそのまま第四胃まで流れ込んでしまい詰まってしまうということだった。
そんな手術を受けてお金がかかってては儲からないと思うが、それが共済で手術代がでるし、死んでも保険金がもらえるとかで、あまりよくないような牛は死んでもらった方がいいというのが相場らしい。
なんともはや、経済動物としてしか扱われない牛が哀れでならない。
この話は続きがあって、そのあと農協の偉いさん達とお話しする機会があったので、手術をするリスクがある濃厚飼料を与える利点を尋ねてみた。
答えは、濃厚飼料を与えなかった場合に比べて乳量が二倍ほどになるということだった。
何年ぐらい搾乳できるのか尋ねたら、5,6年ぐらいとかいうことで、じゃ、粗飼料だったらどれぐらいと尋ねたら13年ほどはいけるということだった。
バイオエタノールで穀物価格が上がった昨今、考えさせられますよね。
私なら、経済的な粗飼料を与え、牛にも出来るだけ健康に長く頑張ってもらう方がいいと思うが、脂肪分の低い牛乳では消費者が買わないのかもしれない。
酪農家も同じだけ搾乳するのに手間が倍になるのでしたくないのかもしれない。
しかし、牛乳の脂肪分なんてバターを入れたらすむことだし、今時はメタボリック防止から脂肪を取らないに越したことはないから低脂肪牛乳でもいいと思うんだけど、やっぱり売れないんだろうと思わざるをえない。
参考的な数字:一年に出荷する標津の農家一軒あたりの量は600トンとかで、1トンが約8万円ということで粗収入は4800万円ほどあるらしい。
ところが、それでも乳価が低いので離農が多いという現実があるぐらい儲からないらしい。
そんな数字と話を聞いて、消費者が低脂肪牛乳を求めだしたら、農家も粗飼料で牛を飼うことができ食べていけるのではないか、それなら牛も少しは幸せかと考えたりしていた。
野菜に窒素肥料を与えすぎることによって硝酸態窒素を多量に含むことになった野菜を食べることによる人体への影響のことも考えると、もっと消費者は食への知識を増やし生産者にこういうものが食べたいと声を大にする時代が来ているのではないだろうか。
そう思いませんか。
(つづく)
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