江龍武

2008年03月19日 20:34

昨夕携帯電話に兄から電話があった。
電話の声は何時になく弾んでいた。
「鳩、捕まえたで~。それも2匹!!」
なにかトラップを改良したら捕れたということだった。
それからは、今日捨てに行く時間とか場所とかを決める話になり、今朝の8時に鳩を乗せて出発した。
中学まで伝書鳩を飼っていた経験があるので、とにかく鈴鹿山脈が鳩には一つの難所というのを知っていたからそれより東に行くことにした。
約100キロほど離れたところに行ったのだが、道すがらの近くの川の堤防に土鳩が群れていたので放しても食べ物はあるようだと少し心安らかな気になった。
車を停めてからはトラップの箱から鳩を掴むのは私の役目という感じがして、近頃は鳥インフルエンザとかの心配もあるし出来るだけ素手で掴まないようゴム手袋をして、手を差し入れて難なく掴まえ兄が風切羽を切れるよう羽根を広げた。
掴まえて思ったのだが、伝書鳩なら胸もあつくどっしりしていたのを憶えているので土鳩の華奢な体に少し驚いた。
兄も思っていたより小さいのにびっくりし、これではトラップの隙間から逃げてたかもしれないと思ったようだ。また改良することだろう。とにかく残り6羽をさらに捕まえることになっている。
兄に一番外の羽根は残してやってもらいそれに続く3枚の羽根を6センチほど切ってもらった。
生き延びて欲しいので出来るだけ飛翔能力を残したいが帰って来ないで欲しいからそれぐらいが適当なように思った。
そして、車の小さな窓を開け人知れず離したら、思った以上に飛翔能力を発揮して飛んだので切り足りなかったかと思ったが、まあ、100キロは無理だろうと思うことにした。
それでも二匹目は念のためもう少し短く切っておいた方がよいかと思いながら、また鳩を掴み羽根を広げたら、兄も私も、「えぇ~~~~~!!!」と言うしかなかった。
羽がすでに切られていた。
それも、私は3枚だけだったが、一番外だけを残して全ての風切羽が切ってあった。
同じことをすでに誰かがやっていたということだ。
おかげで、それでも元気に生きていることが分かったのでまた安心したが、それにしても何か釈然としないものがあった。
兄に鳩を捕らえて羽根を切って放すというアドバイスをした人は捕まえた近くに働いている。その人の知人が近くでその鳩を放したのだという疑いが今でも消えない。
そんなことを思いながらもう一方の羽を伸ばしてみたら切ってないので、これではバランスが悪いだろうとまた3枚を一匹目と同じように切って、車の小さな窓から飛んでいってもらった。
これはさすがに飛翔能力がちょっと低かったが、それでも生きていくのに問題ないと思われる飛びかただった。
それだけのことをしただけなのに鳩に気の毒なことをしたと思いながらやってたのだろう、何となく二人とも疲れたのか自動販売機でコーヒーを買って一息入れることになった。
「動物って、えらいな~。知らん土地で放されても生きていくんやから。」と褒めることで人間の身勝手さから逃れたいのかつい口に出てしまった。
帰路兄の知り合いのところに寄って鳩を捕まえて捨ててきた話を兄がしたら、「鳩を最後は誰が手で掴まえるん?」と知人が兄に尋ねたら、「弟がしよる」と答えていた。
そんなことを期待されていたことがその時分かり、同行を頼まれたことに納得したようなことだった。
雨ですね。
気象も鳩の帰還を望んでいないと言ってます。


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