口座の凍結
午前中にMKさんを見に行くことにしている。
午後はお見舞いの方も来ることが多いしやりにくい。
今日も昨日と変わりはなかったが、顔が小さいように感じた。腫れてなかったと昨日は思ったが、それでも少し腫れていたのだろう。
これは良い傾向だと思っているが、MKさんの枕元で交わされる奥さんとの会話は本人が分かっていたら「何言うとんねん!」と言われるようなことだった。
「この前誰々が、亡くなったら銀行のお金が使えなくなると言ってたけどそうなん?」
「ああ、そうそう、そうなんやで。死んだことが分かると本人名義の口座は凍結されるんよ。そやから、危ないと思ったら、即今困るので引き出して持ってるか自分の口座に移しとくかしんとあかんけど、現金で持ってるのは危ないし、かといって自分の口座に移すのは・・・税務署にこれこれでこうしましたと申告したら許されると思うけど、とにかく出しとかないと使えないし困るんよ。」
「そら~、葬式代も出せないし困るわ~~」
「娘さんに年間110万円までなら贈与税もかからんし移しとくのも考えられるけど、使われる可能性もなきにしあらずやな~」
「ほんまやで~~」
というような会話を交わしてしまった。
カナダでも銀行に、口座名義人が亡くなったことが分かると口座は凍結されることを私の知人で経験している。
日本と違うのは、カナダでは親子、夫婦間の贈与税というものがないので夫の口座から妻の口座に移すのは税務上何の問題もない。だからMKさんのような状態の時奥さんが自分の口座に移しても移ったというだけのことになる。
ちなみに相続税もありません。
少し詳しく書くと、夫から妻に渡ったお金に生じる金利については夫の所得になるという決まりがある。金利に対して節税をさせないということだろう。それについてはうなずけないでもない。
私が日本に帰国してからとまどったのは、カナダでは夫婦のみならず友達とでも一つの口座を持てるjoint accountというものがあったが、日本にはなかったので借金して事業をしようとしたときにそんなものがなく、もし夫婦でするなら二つの口座を持たなければできないということだった。それで、贈与税というものがあるから夫婦でも別々の口座を持たないといけないのだと思うことになった。
だけど、事業用には一つの口座で対処しないと返済の組み方も複雑になりできたものではない。
それで、申し訳ないが妻には私を信頼してもらって私名義の口座で事業を始めることになった。
カナダでは個々人が背番号を持っていて確定申告することになっているので税務上も問題ないし、夫婦や親子間なら贈与税もないのでやりやすい。
なんで一緒に苦労して稼いだ夫婦間のお金に贈与税がかかるのだろうか?
カナダから送金した時、そのことをあまり考えもせず私から私名義の口座にお金を送ってしまったので、妻に渡そうとすると贈与税を税務署に払わねばならない。
何かおかしい。
税務署によると送ってしまってからでは直しようがないということだった。
お金は一人で稼ぐものではない。妻が家に居てくれるから夫は外で稼いで来られる。二人で稼いでいるのと同じことだ。私は、カナダの税法の方が人間的だと思っている。
と、結論してるんじゃなくって、多分命拾いしたと思えるMKさんの枕元で死んだ時の話をしていたことが気になったのだが、本人もアホかと思ってるだけのこと。決して不謹慎なことではないと私は思う。
本人も周りも誰も死ぬことを望んでいるわけではない。ただ、万が一のことを話しているに過ぎない。お互いが何かあったとき安心できることを話しているに過ぎない。
過剰反応は止めましょう。
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